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第159回 2030年の(輸入化石燃料に今以上頼らない)原発ゼロは可能か

2012年9月10日(月)

(1) 2030年の(輸入化石燃料に頼らない)原発ゼロは可能か
2030年の時点での発電のベストトミックスを考えてみると、その時点までにベースロードとなる発電技術を確立していけるかが課題になる。
2030年の発電技術水準が分からない今、現時点の国民意識で2030年の原発依存度を確定的に既定する意味は少ない。
前回述べたように各発電方式ともに一長一短があり、現時点でベースロードとなる発電方式は原子力以外に無い。
ただ、地熱発電は立地を克服し地中の最適箇所を見つけ出していけば、安定的なベースロード発電となる可能性もある。
また、海上風力も全国的に展開できれば有力な資源である。ただ、脱原子力発電で、結果的に輸入化石燃料による発電が増えるようでは、意味は無い。
むしろ、エネルギー安全保障上輸入化石燃料による発電は緊急時バックアップとしての役割にとどめるべきだ。
さらに、電気料金は基本的に現状を超えるものであっては、経済的にダメージが大きい。電気料金が倍になるようでは消費税5%値上げ程度のインパクトがあるのではないかこれでは影響が大きすぎる。
結論的に2030年の(輸入化石燃料に頼らない)原発ゼロは不可能に近い


輸入化石燃料に頼らなければ実現しにくい脱原発(表参照)

 発電比率(2030年予測)

筆者評価 発電比率
種別 資源 優位性評価(満点70) 基幹発電候補 発電単価(1kW時・円) 2010 2020予測割合 2030原発ゼロ 2030原発20%
1 原子力 原子力 60 8 28.1 28 0 20
2 輸入化石燃料 石油 47 20 11 10 10 0
3 LNG 44 10 22.6 20 25 20
4 石炭 51 8 27.2 27 35 30
5 再生エネルギー
 (国産)
風力 48 0.4 8 8
6 水力 54 25.2 9.5 9.5 10 10
7 太陽光 41 42
8 太陽熱 45 40
9 波力 42 40
10 地熱 62 15 0.53 1.1 4 4
11 バイオマス 64 15 2.4 4 6 6
12 核融合発電 核融合炉 60
13 国産化石燃料 メタンハイドレート 64 25 1.5 1.5
101.33 100 99.5 99.5

○:基幹発電候補、△:緊急時バックアップ発電



(2)脱原発による経済的影響
脱原発と言うが化石燃料の輸入による、電気料金高騰(電気料金倍増の可能性)、経済に与える影響(1~5%押し下げの可能性)は計り知れない。
少子高齢化で、経済的に重石がきつくなる日本に脱原発を大胆に模索する余裕は無い。

(3) ベースロードとなる自然エネルギー開発
原子力をゼロにする事が出来るかではなく、ベースロードとなる自然エネルギー(地熱発電)国産化石燃料(メタンハイドレート)、海上風力発電
をどれだけ安価で増やせるかである。
 脱原発は、高価な投資(数十兆円)をしても、結果的に安全保障上問題のある、高価な輸入化石燃料にかなり頼らなければ実現不可能であるなら単なる無駄遣いで改悪にさえなる可能性がある。
 諸外国は原子力燃料の再処理問題は有るが、安全保障を優先している。ドイツは石炭等の資源保有国で、フランスより原子力発電の電力を買える環境にある。
イタリアも脱原発を行っているが原子力発電による電力をフランスから買える。日本の資源環境とは差がある。

(4)電気料金が倍になっても脱原発は本当の民意か
今、発電方式により電力料金を決め、その方式のミックスパターンを複数個作り、スマートメーターにより、その選択で電力を買う方式を採用すれば、
おそらく、少子高齢化に突入している日本、さらに少子高齢化が予測される2030年に向け、2倍になる脱原発の電力を買う人は極めて少数派となるだろう。

☆♪――――――♪
編集後記
 脱原発の民意は大きいが、エネルギーは国の基幹政策であると同時に、技術の裏付けがきわめて重要な政策であり、また、
安全保障上の問題も大きい。さらに選択を誤れば企業工場の海外流出など経済衰退も招き、雇用が奪われ生活困窮を誘発する事も考えなけれればならない。
原子力発電は既に安全対策を進めている。今回の、東日本大震災で福島第一発電所の事故の教訓は生かさなければ成らない。
しかし、津波が100年に一度起こる確率であった今回の津波による事故、津波の少ない地域の原子力発電所の安全対策を施した原子力発電所は
今後、事故の確立はさらに低くなっている。であるなら、無理なく再生可能エネルギーの開発を進めるのと平行し、原子力発電での絶対事故が起こりえない技術革新を進めていく方が、費用対効果が大きいと思われる。これは世界的な流れである。
さらに、資源の無い日本、輸入化石燃料に頼らないエネルギー開発は必須である。2030年に脱原発と言いながら輸入化石燃料の割合が減少していないならエネルギー政策の失敗である。脱原発より、脱輸入化石燃料による安価な電力料金、安全保障を考えた安心なエネルギー供給が理想である。
 輸入化石燃料は備蓄日数も少なく、輸入航路の封鎖が一ヶ月も続けば日本の殆どの機能は大混乱、食料供給も出来なくなる。これらを最悪の事態考えてエネルギー政策を考えていかなければならない。今の日本はアメリカの核の傘のおかげで平和ボケしている。エネルギー政策は国の基幹政策であり最悪の事態も想定しておかなければ成らない。今回の福島第一発電所の事故は想定外だったと言われるが、エネルギー安全保障でも想定外は許されない。
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今日の外来語言い換え辞典 (国立国語研究所外来語言い換え提案引用)
リーフレット<ちらし> 全体 ★☆☆☆ 60歳以上 ★☆☆☆
意味
 宣伝や案内などの目的で配布される,多くは一枚刷りの印刷物
使用例
 ポスター及びリーフレット【ちらし】を作成・配布するとともに
<パンフレット・手引き・案内>


要望問い合わせ他

作成2012.098.10
更新2012.09.09
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