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明日の為の経済ビジネス情報


第155回 脱原発による火力発電依存リスク

2012年5月14日(月)

脱原子力発電(脱原発)により再生エネルギー等の次世代エネルギーを推進する動きがあるがまだまだ原発の代わりをするパワーを持ち合わせていない。
再生可能エネルギーでは地熱発電などは有望であるが今すぐ原子力発電の代わりになる状態ではない。地熱発電、風力発電、水力発電は立地に制限が多い。
国産エネルギーとして期待されるメタンハイドレートはまだまだ開発段階で開発掘削費用も掛かりそうだ。
太陽光エネルギーは発電時間が限られ20ヘクタールの面積で最大1万キロワット程度の発電能力しかなく電力の不安定さをカバーするには強力なバッテリーの技術進化が欠かせない。次世代エネルギーを推進しなければならないが、今すぐ原子力の代わりを出来るものではない。
安定電力確保と言う観点から、次世代エネルギーは、技術的実用化が実現してから推進するべきである。
当面原子力発電に頼るほか無いが、脱原発の流れで化石燃料を使う化石燃料を使う火力発電に頼ろうとしている。
脱原発の流れで化石燃料に頼るリスクを洗い出す。
火力発電に依存するリスクは想像以上に大きなものがある。
1.火力発電依存による化石燃料輸入超過
(1)化石燃料輸入で日本の国力衰退
原子力発電全停止による化石燃料輸入で年間約4兆円必要となっているが、その分貿易赤字を誘発し日本の国力衰退に繋がる。
 化石燃料輸入費用は、電力料金改定までは電力9社の赤字になり、経費節減で到底補える金額ではなく、基本的に電気料金値上げで対応せざるを得ない。
電気料金値上げにより、工場の海外流出、企業の経費節減、家計圧迫に影響が出てデフレ要素になってくる。
(2)為替の水準に左右される輸入化石燃料輸入リスク
今為替水準は過去最高水準の円高である。
わが国の国債発行残高1000兆円、火力発電用化石燃料の輸入増大、新興国の台頭、貿易収支の悪化等円安になる要素は盛りだくさんである。今円高なのはドル及びユーロの弱さゆえ円高になっているのである。
何れ、アメリカのシェールガスの生産、ギリシャ等の財政危機の健全化がドル及びユーロを健全化を推し進めることが考えられ、為替が円安に振れる。
その分化石燃料輸入費用が膨張し貿易収支はマイナス方向になる。為替1ドル80円が120円になれば、化石燃料輸入は4兆円から6兆円になる。一気に1兆円の負担増しとなる。
2.化石燃料は有限資源で価格高騰及び安全保障上のリスクを常に有している。
(1)化石燃料資源枯渇リスク
化石燃料は有限資源であり次の世代には価格高騰している可能性が高くその時点で原子力復活といっても技術継承が出来ていない可能性が高い。
(2)化石燃料輸入に頼る安全保障上のリスク
化石燃料輸入依存による安全保障上の弱点として、民間の石油タンカーやLNGタンカーの通り道を封鎖されれば瞬く間に国内備蓄は底を突き国内の電力は使えないものとなる。今、尖閣列島周辺や、北方海域で他国の戦闘機などに対する自衛隊の出動回数は増加傾向にあり他国との緊張感は高まっている。領有権等の問題で他国との緊張感が一気に高まった場合、海上封鎖などの措置が採られた他場合、資源の無いわが国は一気に窮地に追い込まれる。
戦後日本は、アメリカの核の傘の下で緊張感の和らいだ年月が60年余り続き平和ボケしている、危機が迫ってから気が付くのでは取り返しが付かない。
60年前からの過去の歴史で見れば、原子力発電所の事故で亡くなられた人よりも戦争で亡くなられた人の方が多いことを認識するべきだ。
 日本の衰退を期待している国が有ったとすれば、その国は、日本が脱原発を選択することを望んでいるだろう。
3.原子力発電不稼動による無駄な二重投資
原子力発電不稼動により、原子力発電の保守費用と火力発電所の建設、発電能力向上による二重投資が必要になってくる。
この費用は明らかに電気料金に上乗せされるだろう。
4.福島第一発電所事故は防げた
福島第一発電所事故は、電源、冷却水循環ポンプが動いていれば防げた
 安全対策の電源及び冷却水循環ポンプの二重化は、飛躍的に安全性を高める。
 津波のリスクが少ない日本海側でも今にも原発事故が起こるかのような扱いのニュースが多いが。
基本的に冷却水が循環できる設備が二重化されておれば事故のリスクは桁違いに小さくなる。
二重化は同時に二つ故障しない確立で言えば100年に1度の事故が、二重化対策で1万年に1度の事故となる。
さらに、今回の福島第一発電所事故の対策費が20兆円とすれば、化石燃料輸入に年4兆円として5年分である。
電力が推定確率100年から1万年に一度原発事故を起こせば存続に係わる事故となるが、
化石燃料輸入で1から2年で確実に存続に係わる状態となることは認識するべきである。
☆♪――――――♪
編集後記
今、脱原発の名の下に、政局を動かそうと言う勢力がいるとすれば国の将来を考えたものではない。
マスコミの行過ぎた反原発の報道の中で、本当の選択するべきエネルギー政策が見失われ不透明化する現在、
エネルギー政策を本当に理解している人々はほんの一握りの少数派である。
本来政治は有権者では判断しかねることも高度な視点により、理解し判断するために選ばれた代表者が有権者に代わり執り行うものである。
エネルギー政策の様な高度な視点が必要な判断を有権者に委ねることは、エネルギー政策を政局に利用していると言わざるを得ない。
政治家が判断に困っているからと言って、有権者に判断を委ねることは慎重であるべきだ。少なくとも政局に利用するべきではない。
さらに、脱原発と言う国力を弱める方向の判断を、リスクを理解せずに叫んでいる政治家がいることは、考えが浅いと言うほかない。
最後に、今回の福島第一発電所事故に避難された方震災に東日本大震災に被災された方には、速やかに万全を期して頂くことをお願いし今回の論述は終了したい。
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今日の外来語言い換え辞典 (国立国語研究所外来語言い換え提案引用)
ライフライン<生活線> 全体 ★★★☆ 60歳以上 ★★☆☆
意味
 生活に不可欠な水道・ガス・電気などの供給路
使用例
 生命線・命綱・光熱水路
その他の言い換え
<生命線・命綱・光熱水路>

要望問い合わせ他

作成2012.05.13
更新2012.05.14
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